2022年7月8日、安倍晋三元首相が銃撃されるという事件がありました。
安倍元首相と言えば、とりわけ外交での功績が大きく評価され、世界各国に日本の存在感を示したと言われていますね。
実際に、この事件の後には先進国・後進国問わず追悼記事が出され、安倍元首相の実績を評価し逝去を惜しむ文面を出されていたようです。
そして7月22日、故安倍晋三元首相の「国葬」を日本武道館で執り行うことが閣議決定され、
9月6日には、政府は費用について現時点では全体で約16億6000万円にのぼる見通しであることが発表されています。
「国葬」とは聞きなれない言葉だな、と思った方もいるいのではないかと思います。
今日は連日ニュースで目にするようになった「国葬」について、実際にかかる費用やどこから捻出されるのかなど、気になる事を調べていきたいと思います。
国葬とは?
国葬(こくそう)とは、国家にとって特別な功労があった人物の死去に際し、国の大典として国費で行われる葬儀のことである。
引用元:wikipedia
天皇をはじめとした特定の皇族の方の葬儀も国葬に当たりますが、その場合特に「大喪儀(たいそうぎ)」として区別され、その中でも天皇および上皇の崩御の際には国の儀式(国葬)として「大喪の礼(たいそうのれい)」が挙行されます。
1926年(大正15年)10月21日に国葬令(大正15年勅令第324号)が公布され、国葬の規定は明文化されましたが、
第二次大戦後に国葬令が失効したことにより、規定された国葬はなくなっています。また、新しい皇室典範の葬儀に関する規定は、第25条の「天皇が崩じたときは、大喪の礼を行う」という記述のみとなりました。
国葬の費用は?
国葬の費用はどのくらいかかる?
国葬を行う場合、どのくらいの費用がかかるのでしょうか?
海外からの弔問客を受け入れたり、望む人は国民も足を運ぶ場になると考えたら規模は相当のものになりそうですよね。
なかなか想像のつかない話だと思い、過去の国葬などを調べてみました。
過去の国葬・合同葬にかかった費用
【1810万円】吉田茂元総理大臣 (国葬)
第二次大戦後に国葬令が失効してから、皇族の方の葬儀を除いて国葬となった最初の人物として「吉田茂」氏が挙げられます。
吉田茂氏の国葬での国費負担額は1810万円。
第二次世界大戦後の7年の間、首相として戦後日本政治の方向を定めた人物である吉田茂氏の死去の際には、閣議決定による「国葬儀」形式での国葬となりました。
現在とはお金の価値が違うのではないかと思うので、当時の金額で1810万円というのは現代の価値に置き換えるともっと多いのではないかと思います。
調べてみると、物価から考えた場合明治時代の1円=3800円(現代での価値)にあたるようです。
また、当時の給料なども踏まえて試算した場合では、庶民にとっての1円の価値は現代における2万円ほどにもなったのではないかとも。
昔のお金の価値を現代に照らし合わせるのは難しいですが、数字だけを見た額より当時の感覚では高い費用であることは間違いなさそうです。
【1億1871万円】三木武夫元総理大臣 (合同葬)
昭和63年、三木武夫元総理大臣の死去の際に、衆議院・内閣合同葬の形で葬儀が行われました。
国葬とは違うものになりますが、
国葬の際と同じく全額が国費で支出されていて、その額は戦後の元総理大臣で最も多いおよそ1億1871万円となっています。
総理大臣経験者の葬儀は「合同葬」「国民葬」といった形で行われ、5割を国費負担として行われるものが主流となっているようです。
三木武夫元総理大臣の例では、例外的に10割が国費負担となっています。
国葬の費用はどこから出るの?
国葬にかかるお金は国費(国が支出する経費)から支払われます。
そのお金は一般会計歳入から支出され、
- 国民が納める税金
- 税外収入( 国の土地を売ったなどその他)
- 国債発行をして入ってきたお金
で構成されます。
国葬が行われる場合、国民が税金として納めたお金からも費用が支出されることになります。
安倍元総理の国葬の費用と内訳は?
2022年9月6日、安倍元総理大臣の国葬に充てられる費用が全体で約16億6000万円にのぼる見通しであることが政府から発表されました。
その内訳として、以下のように説明がされています。
■会場の設営費など式典の経費として約2.5億円
■警備に要する経費として約8億円(このうち、全国の警察から派遣される応援部隊の旅費、手当等で約5億円・装備の借り上げ等で約3億円)
■海外要人の接遇に要する経費として約6億円(このうち、要人の車両の手配や空港での受け入れ態勢の構築等で約5億円・要員として一時帰国させる在外公館職員の旅費で約1億円)
■自衛隊の儀仗(ぎじょう)隊等の車両借り上げ費等として約0.1億円
過去の国葬に充てられた費用と比べると、倍以上のものになっていますね。
会場設営費など、2億4940万円の支出が先に公表されていましたが、警備費用などを含めた概算として新たに発表された金額に驚いた人も多いのではないかと思います。
未だコロナ禍の只中であり、安倍元総理への銃撃というショッキングな事件が背景にあることを踏まえると会場の広さや警備費に割く所が多くなるのは必然かとも思いますが、国民感情との兼ね合いへの配慮も難しい所ですね。
過去に国葬になった人一覧
年月日 | 名前 | 地位・役職(備考) |
ー戦前ー | ||
1878年5月17日 | 大久保利通 | 内務卿(事実上の国葬) |
1883年7月25日 | 岩倉具視 | 右大臣 |
1887年12月18日 | 島津久光 | 公爵 左大臣 |
1891年2月25日 | 三条実美 | 公爵 太政大臣 |
1895年1月29日 | 熾仁親王 | 陸軍大将 参謀総長 |
1895年12月18日 | 能久親王 | 陸軍大将 近衛師団長 |
1896年12月30日 | 毛利元徳 | 公爵 参議 旧山口藩主 |
1897年2月7日 | 英照皇太后 | 皇太后 大喪儀(事実上の国葬 |
1898年1月9日 | 島津忠義 | 公爵 参議 旧鹿児島藩主 |
1903年2月26日 | 彰仁親王 | 元帥 陸軍大将 |
1909年11月4日 | 伊藤博文 | 公爵 内閣総理大臣 元老 |
1912年9月13日 | 明治天皇 | 天皇 大喪 |
1913年7月17日 | 威仁親王 | 元帥 海軍大将 |
1914年5月24日 | 昭憲皇太后 | 皇太后 大喪 |
1916年12月17日 | 大山巌 | 公爵 元帥 陸軍大将 内大臣 |
1919年3月3日 | 李熈 | 李太王(元韓国皇帝 高宗) |
1922年2月9日 | 山縣有朋 | 公爵 元帥 陸軍大将 内閣総理大臣 元老 |
1923年2月14日 | 貞愛親王 | 元帥 陸軍大将 内大臣 |
1924年7月12日 | 松方正義 | 公爵 内閣総理大臣 元老 |
1926年6月10日 | 李坧 | 李王(元韓国皇帝純宗) |
1927年2月7日 | 大正天皇 | 天皇 大喪 |
1934年6月5日 | 東郷平八郎 | 侯爵 元帥 海軍大将 |
1940年12月5日 | 西園寺公望 | 公爵 内閣総理大臣 元老 |
1943年6月5日 | 山本五十六 | 元帥 海軍大将 連合艦隊司令長官 |
1945年6月18日 | 載仁親王 | 元帥 陸軍大将 参謀総長 |
ー戦後ー | ||
1951年6月22日 | 貞明皇后 | 皇太后 大喪儀(事実上の国葬) |
1967年10月31日 | 吉田茂 | 内閣総理大臣 |
1989年2月24日 | 昭和天皇 | 天皇 大喪の礼 |
2022年9月予定 | 安倍晋三 | 内閣総理大臣 |
戦前、李太王熈(高宗)、李王坧(純宗)といった大韓帝国皇帝経験者はいずれも特旨によって国葬となっています。
安倍元総理大臣の国葬は、戦後行われる内閣総理大臣経験者として2人目、戦前と合わせると総理経験者として6人目の国葬となります。
まとめ
今日は、最近よく耳にする「国葬」について詳しく調べていきました!
現時点で今回の安倍元総理の国葬にかかる費用は過去のものと比べても多い概算になっているようです。また、戦前から見ていくと28人と少なくない人数が国葬になっているのですね。
本来の葬儀の意義を思うと故人とご遺族が穏やかにいられるように配慮されている事も必要なのではないかな、と一般人目線では思ってしまいますが、国葬となると一般的なものとは違う意味合いが大きいのでしょうね。今後、詳しい説明がされるなど少しでも国民の理解の得られる形になっていくことを願っています。
現時点では、安倍元総理の国葬の日程は9月27日と発表されています。
様々な意見が出ている事もあり今後もいろいろなニュースが続いていきそうですが、国葬が一体どのようなものなのかという部分も踏まえて、これからのことに注目していきたいと思います。
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