2022年10月6日、スウェーデン・アカデミーは今年のノーベル文学賞をフランスのアニー・エルノーさんに授与する事を発表しました。
フランスからの受賞は2014年のパトリック・モディアノさん以来8年ぶりとなり、アニー・エルノーさんの受賞に関して「個人的な記憶の根源や束縛を明らかにする勇気と洞察力」などが授賞理由に挙げられています。
アニー・エルノーさんは現在82歳。
長年、高校・中学校などで教鞭をとった経歴を持つ女性であり、またその著作は数々の賞を受賞しています。
今日はそんなフランスの作家アニー・エルノーさんについて、著書は日本で読めるのか?プロフィールやこれまでに発表されている作品ついても調べていきたいと思います!
アニー・エルノーさんのプロフィール
アニー・エルノーさんのプロフィール
生年月日 | 1940年9月1日 |
出身地 | フランス、セーヌ=マリティーム県リルボンヌ |
職業 | 作家、教員 |
主題 | オートフィクション、自伝小説 |
受賞歴 | ルノードー賞(1984) マルグリット・デュラス賞(2008) フランス語賞(2008) フランソワ・モーリアック賞(2008) マルグリット・ユルスナール賞(2017) ノーベル文学賞(2022) |
生い立ちや学歴、教師として
アニー・エルノーさんはフランスのセーヌ=マリティーム県リルボンヌに「アニー・デュシェーヌ(Annie Duchesne)」として生まれ、同県のイヴトという場所で育ちました。
両親は工場労働者で、後に食料雑貨店を兼ねたカフェを開店した際に住まいをリルボンヌからイヴトに移されたようです。
ルーアン大学およびボルドー大学で学び、中等教育教員適性証書、次いで子育てをしながらフランス現代文学の中等教育上級教員資格を取得。
それ以降は高校や中学校でフランス現代文学をを教え、やがて遠隔教育センターに参加することになりました。
教員として多忙であったのではないかと思いますが、(子育てしながら教員資格を取得しているのもすごい!)その中で作品を執筆し世に送り出している事を見ると、とてもバイタリティのある方なのですね!
小説家として
アニー・エルノーさんが最初に発表したのは、1974年の自伝小説『空っぽの箪笥 (Les Armoires vides)』。この作品では、中絶の経験を中心に女性の生(性)が描かれています。
第1作目から現在までに実に22作品を書き上げているアニーエルノーさんですが、作品の表現するテーマは一貫しています。ほとんどが自伝小説であり、自身の体験から様々な視点を切り取っています。中絶、恋愛、結婚や子育て、乳癌の治療を受けた経験から語られる作品、時に老いをテーマに母親の晩年を書き著した作品なども。複数の賞を受賞した著作『歳月 』には、両親の一生を含む半世紀以上にわたる時代の流れを背景に、アニー・エルノーさんの個人史が描かれています。
1984年には自伝小説『場所』でルノードー賞を受賞し、アニー・エルノーさんの文学は大きく飛躍する事に。2008年にはそれまでの全作品についてフランス語賞を受賞されています。
2017年には、彼女の全作品に対してマルチメディア作家協会からマルグリット・ユルスナール賞を授与され、2022年ノーベル文学賞を授与されました。
有名な作品はいくつもありますが、自らの性愛体験を描きベストセラーとなった『シンプルな情熱』は2020年映画化され日本でも話題となりました。離婚した女性教師と妻子ある東欧の外交官の激しく「シンプルな」肉体関係を描いた本作は、カンヌ国際映画祭の公式作品に選出され、日本でも公開されています。
アニー・エルノーさんの本は日本で読める?
ノーベル文学賞は、文学の分野において理念をもって創作し、最も傑出した作品を創作した人物に授与される賞。
一つの作品に対して与えられるものではなくその作家の作品、活動の全体に対して与えられる賞であり、今回の授与に際しても創作活動を通して表現されるアニー・エルノーさんの理念に注目が集まったようです。
そんなアニー・エルノーさんの作品ですが、日本でも翻訳版が出版されており書店やネットでの購入などで読むことが出来ます。
すべての作品が日本でも翻訳され出版されている訳ではないようですが、今回の受賞を受けて新たに過去の著書の翻訳版が出版されるかもしれませんね。
以下に、著書の一覧と出版社などをまとめてみました!
日本で読めるアニー・エルノーさんの作品一覧と書籍情報
現在日本で翻訳されているのは、早川書房から出版されている6作品
2004年に出版された「嫉妬」には「事件」も収録されているようですが、絶版になっているのかどこにも取り扱い情報はなく、amazonではやや高額な中古本が出品されています。11月には新装出版となるようですので、手元に欲しい方は少し待ってみるのが良さそうです!
タイトル | 発売日 | 出版社 |
シンプルな情熱 | 2020年7月1日 | 早川書房 |
嫉妬/事件 | 2022年11月2日 ※発売予定日 | 早川書房 |
ある女 | 1993年7月1日 | 早川書房 |
場所 | 1993年4月1日 | 早川書房 |
凍り付いた女 | 1995年8月1日 | 早川書房 |
戸外の日記 | 1996年9月1日 | 早川書房 |
各書籍のあらすじ
シンプルな情熱
去年の九月以降、私は、ある男性を待つこと以外、何ひとつしなくなった― パリの大学で文学を教えるエレーヌは、あるパーティでロシア大使館に勤めるアレクサンドルと出会い、そのミステリアスな魅力に強く惹かれ、たちまち恋に落ちる。
嫉妬/事件 ※早川書房から2022年11月2日発売予定
6年間つきあってきた年若い恋人と別れ、3ヶ月後彼から新しい恋人と共に暮らすと宣告された「私」は激しい嫉妬に苛まれる。その女のことしか考えられなくなり、どこに住むどんな女なのか、インターネットや名簿、あらゆる手段を使って特定しようとする。次第に私は狂ったようになり、攻撃的になってきて…。妄執に取り憑かれた自己を冷徹に描く表題作。違法だった中絶の壮絶な経験を描く衝撃作「事件」を併録。
ある女
あらゆる女の物語、母を失ったあらゆる娘の物語、時とともに力が衰えていくあらゆる女家長の物語、がむしゃらに人生を突っ走ってきたが、ある時ふと手綱を緩めてしまうあらゆる寡婦の物語。
場所
『シンプルな情熱』と同様、決して美化することなく綴られる「”醒めた激情”の記録」。 生まれ育った下層社会からの脱却、ブルジョア社会に仲間入りし感じる父親との隔たりを描く。
凍り付いた女
彼女は、結婚生活に失望している。いわゆる主婦の役割を期待されて、家事に明け暮れるうち、生きる意欲や、外界への好奇心が、自分のなかで錆びついていくのを感じるしかない。自由と自立のなかの幸福を志向していたはずなのに。自らの軌跡をたどって、彼女が「女の子」として、「女性」として、どう生きてきたかを語る。
戸外の日記
パリ近郊の新興都市セルジーに住む著者は、84年のルノードー賞受賞作『場所』の翌年から『ある女』と『シンプルな情熱』の執筆期間をはさんで92年までの八年間、「戸外」の日常的な場所で見かけた人びとの情景を日記のごとく書きとめていた。そのスケッチ風の短い断章からなる本作品は、独自の視点と感性で現代フランスの断面を見事に浮かび上がらせる。
まとめ
今日はノーベル文学賞を受賞されたアニー・エルノーさんのプロフィールや、日本で読める著書についてお届けしていきました!
これまでの活動が評価されての受賞であるとともに、今後も今回のノーベル文学賞受賞によってより一層その名前や作品が世に広まっていくのではないかと思います。
鋭い感性で生々しくも感じられるテーマを綴るアニー・エルノーさんの作品は、一度は読んでみたいと管理人も感じました!
この機会に、気になった方はアニー・エルノーさんの作品に是非触れてみてはいかがでしょうか?
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